なめがたヒストリー
子供神輿がカワイイ! 饅頭を食べる祇園祭
お久しぶりです!からすです!
令和になってしばらく経ってしまいましたが、元号が変わって一発目のなめがたヒストリーです。
最近は夏になると、なめがたヒストリーを書かなきゃみたいな謎の感覚です。
さて、今回は「白浜の饅頭祇園」について取り上げてみようと思います。
筆者自身も、饅頭という名前だけでものすごく気になっていたこの祭り…。
はたしてどのようなお祭りなのか。
どうぞご覧ください。
饅頭祇園という祭りはインターネットを検索しても出てきませんし、文献でもほとんど確認ができません。
その中でも、唯一詳しく載る『麻生町史 民俗編』の中には以下のようにあります。
『麻生町史 民俗編』より写真引用
~前略~
白浜では、祭礼前日に子供たちが全員裸で神輿と一緒に北浦へ飛び込み、神輿を洗ったという。
~中略~
白浜の祇園祭では、神輿を担いだ子どもたちの一行は、各家の庭先に入ると、ホラ貝を吹き鳴らし、掛け声をかけながら神輿を上下に大きく揺さぶる。
そして、シデの付いた榊でお祓いをする役目の子どもや、「悪魔払い、悪魔払い」と大声で連呼する子供たちもいて祭礼の目的を明確に示している。
『麻生町史』が編纂された平成13年のころはこのような形態で祭りが行われていたという事が分かります。
各家の前で文言を唱える子供達
饅頭祇園は、6月23日に一番近い日曜日に執り行われる白浜地区の祭礼です。
小さな子供神輿をリヤカーに載せて曳き、白浜地区の家々約120軒を回ります。
小学1年~中学1年までが参加する神輿は、かつては男の子だけの祭りでしたが、現在は女の子も参加しています。
家の前に着いた子供たちは、ホイッスルの合図の後、小学1年生は大幣を手にして「あくまば~らい!、あくまば~らい!」と唱え、それ以外の子は「わぁ~~~しょい!わぁ~~~しょい!」と3回唱えます。
唱え終わると須賀神社と書かれた紙札を家人に頒布し、次の家へと回って行きます。
ではなぜこのような祭りをするようになったのでしょうか。
この子供神輿の由来はこのようなものです。
かつてより白浜地区は半農半漁のとても豊かな土地で、豪華絢爛の神輿を大人たちが担いで祭礼を行っていた。
しかし、ある時より神輿が暴れてどうしようもないので、神輿を北浦に流した。
すると神輿を流した翌年から子供たちに疫病が流行った。
これは神輿を流した祟りだとした白浜の人々は、この疫病を鎮めるために子供達だけで執り行う神輿を作成し祭礼を執り行った。
すると疫病は収まり、白浜の地に平和が訪れたので、その後ずっと神輿を執り行っているとの事である。
白浜の稲荷神社 行方和鏡神職へのインタビュー
白浜から山田へ流された神輿の予想経路
この由来を聞いてピンと来た方はなめがたヒストリーを凄く読んでくれていますね(笑)
以前このなめがたヒストリーの中でも特集をしたの山田の祇園祭の暴れ神輿の由来の前段階の話ですね。
山田の祇園祭の由来は白浜から流れてきた神輿を祀ったという事なので、しっかりと流した元と流された先のお祭りが繋がっているんですね!
筆者もこれにはビックリしました!
そういえば、白浜の神輿と山田の神輿は比べてみると色は全く違いますが、形は同じです。
いくら由来とはいえ、ここまで色々な場所で暴れ神輿の伝説が残っていて話が繋がっていると本当に過去に疫病のような事があったのではないかとも思ってしまいます。
もしかしたら先人が何かを伝えようとしているのかもしれませんね。
白浜の饅頭祇園の神輿
山田の祇園祭のあばれ神輿
さて、ようやく饅頭の話です。
饅頭祇園では各家庭で大量の手作りの饅頭を作ります。
なぜ饅頭を作っているのかというと、「昔は饅頭は御馳走だったからお祭りの日に作ってお祝いしたんだよ」などとおっしゃっていました。
この饅頭ですが、子供神輿が出ている間に各家庭で交換され食べるという事で、子供達も家に帰ったら饅頭があるという事で楽しみにしていました。
今回は饅頭について、元スーパー庄八の谷田川洋子さんに饅頭作りのお話を聞いてきました。
饅頭を蒸かす谷田川さん
谷田川さんは饅頭祇園の6月23日が誕生日なので、毎年自分の誕生日にケーキではなく饅頭を作っているそうです。
谷田川家に嫁いできてから40年間毎年欠かさず饅頭を作っているそうで、多い時には2日がかりで300個も饅頭を作ったという事です。
しかし、最近は饅頭を作る家も少なくなってきたので個数を減らし、今年は80個ほどのお饅頭を作ったとか。
それでも朝5時起きで饅頭を作ったそうですが…
完成した饅頭はどれもホカホカの艶々で、とても家庭で作ったとは思えない出来栄えです。
谷田川さんは、お饅頭を近所に配りに行っていました。
餡も皮もすべて手作りです!
出来上がった饅頭はとってもおいしそう♪
それでは令和元年の饅頭祇園をダイジェストでお送りします。
神社の掃除は朝早くから行われます。
稲荷神社から神輿を出して行方神職の家へ向かいます。
今回参加した17人の子供たち!
朝だからちょっと眠いかな?(笑)
神職宅に着くと神輿に御霊を入れます。
子供達に由来を説明する行方神職
小学1年生にお祓い用の大幣を渡します。
神職に「悪魔払い」を教えてもらう子供達☆
神職宅で一回目の「わぁ~しょい」の練習です!
各家庭に頒布する須賀神社のお札で、子供達の手作りです。
一生懸命力を合わせてリヤカーで神輿を曳きます。
白浜のお宅は全軒回るそうです。
小学1年生は初めてなので大はしゃぎ♪
小学1年生は初めてなので大はしゃぎ♪
わぁ~~しょい!!わぁ~~しょい!!
あくまばぁ~らい!!あくまばぁ~らい!!
最後は神職宅へ向かいます。
御霊を神輿から神職宅へと遷します。
最後に神輿を稲荷神社に返して…
1日終了となります!
今回白浜の饅頭祇園を取材して思ったのですが、白浜の饅頭祇園にはどうしても解けない謎が3つあります。
それについて書いていこうと思います。
実は白浜という地区には稲荷神社、愛宕神社、水神社の3つの神社しかありません。
子供達が頒布している紙札の「須賀神社」は白浜には存在しないんです。
あまり子供達は気にしてはいないようでしたが、これはすごく面白いことです。
饅頭祇園(天王様)で頒布する紙札
白浜に存在しない神社である須賀神社の文字が見える。
また、子供たちが一生懸命運んでいる旗を見ると八坂神社と須賀神社という文字が見えます。
祇園祭というお祭りの性質上、主祭神として祀るのはスサノオか牛頭天王になるので、須賀神社のご祭神のスサノオ、そして八坂神社のご祭神の牛頭天王は分かります。
(詳しくは以前のなめがたヒストリーのこちらの記事をご覧ください)
しかし、八坂神社も須賀神社も白浜には存在しないのです…なぜでしょう…。
白浜地区の方々から話を聞くと、かつて法螺貝を吹いて饅頭祇園を行っていたという話も聞けたため、修験者との関係も考えられる事。稲荷神社の周りに大きな土地があることから、もしかすると廃仏毀釈以前は、白浜地区に八坂神社か須賀神社があったという仮説もたてられるかもしれません。
いずれにしても、これは歴史に思いを馳せる事のできるとても面白い事例だと思います。
あなたはこの謎をどうお考えになりますか?
神輿と一緒に練り歩く八坂神社の旗
神輿と一緒に練り歩く須賀神社の旗
行方神職の家でいただいた饅頭
これが筆者が取材した中で最大のミステリーですね。
というのもこの饅頭祇園は、
1:饅頭は各家庭で作られて近所に配られる。
2:神輿は地区内を練り歩く。
という要素で構成されていますが、この2つの行事が全く交わることがないという衝撃の事実があります。
筆者自身取材に行く前は、饅頭祇園という名前だけ聞いてハロウィン的なものを想像していたので、子供たちが饅頭を各家庭で貰うものだとばかり思っていましたが、現実そんなことは一切なく、饅頭は饅頭。神輿は神輿。
これも取材の後によく考えましたが、もしかしたら元々は饅頭と神輿は別の祭りだったものが、いつの時代かに日にちを合わせて合流したと考えると良いのかもしれません。
いずれにしても、なぜこの祭礼の形態になったのか。
白浜の饅頭祇園は、行方市の祇園祭を紐解くうえで重要なポジションになっているということは間違いないでしょう。
いかがでしたか? 白浜の饅頭祇園。
毎年行方市の祇園祭を見続けている筆者としては、色々謎が多くてロマンが膨らむ祇園祭でした。
白浜の先人たちが形を変え、方法を変え何とか後世に伝えようとした結果、現在の白浜の饅頭祇園の形が出来上がってるんだなぁとも感じました。
今回取材をさせていただいた行方神職も「このお祭りは形は変わっていったとしても、時代に合わせてこれからも続いていってほしいと願っています」と語った事からも、柔軟に形を変えながら現在まで継続してきた白浜っ子魂を見た気がしました。
お祭りに参加した子供たちが伝統を守りながらも、時代に合わせながら柔軟に白浜の饅頭祇園を続けていけることを願っています。
これからもずっとずっと続いていきますように…。
麻生町史編さん委員会『麻生町史 民俗編』(麻生町教育委員会 2001)
・行方和鏡神職
・谷田川正勝様
・谷田川洋子様
・中川稔様
・白浜地区の皆様
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。
行方市麻生1076-3
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三代に渡って地元に愛される和菓子・洋菓子の店!!
行方市蔵川144-1
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